不動産アカデミー
不動産アカデミー
基礎講座ビジネス講座コピーライター養成起業家養成インテリア講座
HOME > もしものための法律講座 > 「売買契約と手付」について
   

「売買契約と手付」について
先日、新築マンションの売買契約をしました。そのマンションの完成は来年ですので、実際に住めるのは半年くらい先になってしまいます。その後、近所に更に安くて広い素敵なマンションができるという話を聞き、非常に悔しくてしょうがありません。できれば契約を取り消して、そちらのマンションを購入したいのですが、果たして可能なのでしょうか?また、既に支払ったお金は返ってくるのでしょうか。



原則、契約は解除できません。ただし支払済みの手付金を放棄すれば解除可能な場合もあります。

1.原則、契約解除できない
一度、締結した契約は、売買契約に限らず、原則として後から取り消したり、解除したりすることはできません。なぜなら、契約の当事者の一方的な都合で契約を取り消したり、解除したりすることができるとすれば、何のために契約をしたのか意味がなくなりますし、他方の契約当事者に不測の損害を与えてしまうことになりかねないからです。もちろん、売買契約時に売主から騙されたとか、脅されたといった事情があれば契約を取り消すことができますし、売主が契約に定めた約束を守らない(このことを債務不履行といいます。)といった事情があれば契約を解除することができます。しかし、これはあくまでも例外であり、この場合は、単により良い物件が他にあったということに過ぎませんから、売買契約を取り消したりすることはできないのが原則です。

●売買契約を解除(取り消し)できるのは?
 
(1)騙された
(2)脅された
(3)相手が約束を守らない
(4) 手付金を放棄する


2.手付金の放棄による解除
以上が原則ですが、不動産売買の場合、通常の売買契約と異なり手付金を放棄することによって契約を解除できる場合があります。
通常、不動産取引を行う場合、売買契約時に手付金というお金を支払います。
それでは、契約時に手付金を支払うというのはどのような意味があるのでしょうか。手付金には、次の3つの意味があると言われています。1つ目は契約が成立したことの証拠となるという意味の手付で“証約手付” といいます。2つ目は契約当事者の一方が債務不履行をした場合に、手付を交付した者は相手方にそれを没収され、受取った者はその倍額を返さなければならなくなるという意味の手付で、“違約手付” といいます。この場合の手付は、違約金という意味を持つことになります。3つ目が解約権の留保という意味の手付で“解約手付” といいます。解約権の留保というのは具体的にいうと、手付金を交付した者はその手付金を放棄し、受取った者は受け取った手付金の倍額を支払って契約を解除できるという意味です。

このように契約時に手付金を交付した場合、手付金にはいろいろな意味があるわけですが、契約時に特に手付金の意味を定めておかなかった場合は、解約手付の意味があるのだとされています(民法557条)。したがって、契約時に手付金について特段の定めをしていない場合、買主は既に支払った手付金を放棄すれば、契約を解除することができます(このことを手付流しといった言い方をします。)。手付金を放棄するわけですから、残念ながら既に支払った手付金の返還を請求することはできません。ちなみに、売主からも契約を解除することができることになります。この場合、売主はあなたが既に支払った手付金の倍額をあなたに支払えば(倍額という意味は、売主は、既にあなたから支払を受けた手付金を返すのと同時に、同額のペナルティーを支払うということで、売主、買主いずれから解除する場合も手付金分を相手方にペナルティーとして支払えば契約を解除することができることになるわけです。)、契約を解除することができます。(このことを手付倍返しといった言い方をします。)



3.手付金放棄による解除の時期的制限
それでは、売買契約時に手付金を交付し、手付金について特に意味を定めておかなかった場合はいつでも契約を解除することができるのでしょうか。手付金を交付した場合、手付金を放棄すれば無制限に契約を解除できるとすると、相手方に不測の損害を与えてしまう場合があります。例えば、売買契約を締結した売主が、契約が履行されることを強く期待して費用をかけて内装工事をしてしまった場合のように、契約が履行されることを強く期待した売主の信頼を保護してあげなければなりません。そこで、買主が手付金を放棄して解除するのも、売主が手付金を倍返しして契約を解除するのも、相手方の一方が契約の履行に着手するまでにしなければならないとされています。履行に着手するとは、債務の履行行為の一部をし、または履行をなすために必要となる前提行為をすることをいう、と考えられています。前述した例のように、売主が契約が履行されることを期待して内装工事をしたような場合は、履行に着手したことになり、買主からの解除はできないことになります。


4.結論
したがって、手付金を放棄して売買契約を解除したい場合は、売主が履行に着手するまでに解除しなければなりませんので、手付金を放棄してでも、契約を解除して新しくできたマンションを買った方が良いかどうか判断し、解除した方が良いと判断した場合、早急に売主に対して売買契約の解除を申し入れた方が良いでしょう。


 

No10. 日照権
No11. 借地権の対抗力
No12. 定期借家契約
No13. 定期借地契約
No14. 登記簿の面積
No15. 買付証明書
No16. 即決和解
No17. 抵当権消滅請求制度